育児か仕事か? 悩めるあなたへ送る、あるエンジニアの選択と未来【体験談】

「育児と仕事、どっちを取るべきか…?」

キャリアを築きたい大切な時期と、子育てという人生の一大イベントが重なり、板挟みになって苦しんでいませんか?

今回は、まさにそんな状況に直面し、悩み抜いた末に「家庭」を選んだ、あるメカニカルエンジニアの体験談をお届けします。上昇志向が強く、仕事で成果を出したいけれど、家庭の事情で思うようにいかない…そんなあなたの心に、少しでも光を灯せたら幸いです。

スキルアップしたい!でも家庭も待ったなし… 葛藤の日々

私が新入社員として会社に入ったのは24歳の時。メカニカルエンジニアとして、まさにこれからスキルを磨き、キャリアを築いていこうと意気込んでいました。

26歳で結婚し、翌年には第一子が誕生。エンジニアとして最も成長したい時期に、育児という、予測不能で待ったなしの「ライブイベント」が始まったのです。

しかも、私たちは核家族。私の就職先は地元から遠く、妻の実家も頼れない状況で、頼れる人は誰もいませんでした。さらに追い打ちをかけるように、妻が結婚後に難病を発病。私が育児にも、家計を支える収入面でも、大きな力を注がなければならない状況になりました。

「サラリーマンとしてガンガン仕事をしてスキルを伸ばしたい!」

「でも、家庭を放置することなんて絶対にできない…」

当時の職場を見渡せば、仕事ができて出世している上司は、独身か、家庭を顧みないタイプの人ばかり。中には、愛想を尽かされて離婚している人もいました。まだ「ライフワークバランス」なんて言葉も一般的ではなく、「父親が育児のために仕事をセーブする」という考え方は、ほとんど理解されない時代でした。

「仕事より家庭」苦渋の決断

最初は、なんとか仕事と家庭を両立させようと必死でした。しかし、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ私にとって、マルチタスクは非常に苦手。キャパシティが少ないこともあり、両立は困難を極めました。心身ともに疲弊していく中で、私は決断を迫られました。

そして、選んだのは「仕事より家庭」でした。

上昇志向の塊だった自分にとって、それは苦渋の決断でした。しかし、このままでは共倒れになってしまう。家庭を守るためには、仕事への全力投球を一旦手放すしかなかったのです。

家庭を選んで「失ったもの」

この選択によって、失ったものもありました。

  1. 早期出世: 同期たちが管理職へとステップアップしていく中、私は現場に留まりました。
  2. 上の世代との交流: バリバリ仕事をする若手は、やはり上の世代から目をかけられやすいもの。飲み会や休日の交流などの機会も減り、そうした繋がりは希薄になりました。

家庭を選んで「得られたもの」

しかし、失ったもの以上に、大きなものを得ることができました。

  1. かけがえのない家庭: もしあのまま仕事を優先していたら、妻との関係は破綻し、家庭を失っていたかもしれません。家族との時間は、何にも代えがたい宝物です。
  2. 「会社至上主義」ではない価値観: 会社だけが全てではない、という考え方が身につきました。これは、多様な価値観を持つ若い世代と円滑に仕事を進める上で、非常に役立っています。私の同世代のマネージャーにはない、私の強みとなりました。
  3. じっくりとスキルを磨く時間と専門性: 早期出世は逃しましたが、その分、現場で地道に経験を積み重ねることができました。焦らず、一つ一つの仕事に丁寧に向き合う中で、設計者としての深い知識とスキル、そして確固たる自信を築き上げることができたのです。
  4. 心身の健康: 仕事か家庭か、どちらかを選んだことで、心身のバランスを保つことができました。もし両方を無理に追い求めていたら、きっとどこかで限界が来ていたでしょう。

回り道が教えてくれた、自分らしい生き方

上昇志向が強かった私ですが、今振り返ると、ASDの特性を持つ私には、急いで階段を駆け上がるよりも、一歩一歩着実に、ゆっくりとスキルを身につけていく生き方の方が合っていたのだと思います。

地道な努力が実を結び、今では「この分野なら、あの人に聞け」と、社内の他部署からも相談が来るような、専門分野での第一人者として認められるようになりました。

そして、驚くことに、出世競争という面でも、結局は同期たちに追いつくことができたのです。技術力だけでなく、多様な視点を持つマネジメント能力も、時間をかけて培うことができました。

育児と仕事の板挟みで悩むあなたへ

もしあなたが今、かつての私のように、上昇志向と家庭との間で板挟みになり、苦しんでいるのなら伝えたいことがあります。

もちろん、仕事と家庭を両立できるスーパーマンのような人もいるでしょう。しかし、それが苦痛になっているのであれば、何かを手放す勇気も必要かもしれません。

私のように、「家庭」を優先する道を選んでも、決してキャリアが終わるわけではありません。遠回りしたとしても、最終的に仕事で大きな花を咲かせることだってあるのです。

大切なのは、世間の常識や誰かの価値観に縛られるのではなく、あなた自身が納得できるバランスを見つけること。そして、自分のペースで、一歩一歩着実に進んでいくことです。

「育児か仕事か」という二者択一で悩むのではなく、あなたらしい「育児も仕事も」の形を見つけてみませんか? その選択が、きっとあなたの未来を豊かにしてくれるはずです。

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