僕の凸凹日記

機械設計者と凹凸さん

一松

一松です。私は大手メーカーで機械設計の仕事をしています。日々の業務の中でふと感じることがあります。それは、私の周囲には「凹凸さん」(発達障害の特性のグラデーションには濃淡がありますが)が多いということです。そして、以外にも仕事はスムーズに進んでいきます。

もしかしたら、凹凸さん(特にASD系の特性をお持ちの方)と「機械設計」という仕事は、実は非常に相性が良いのではないか――そんな風に思う今日この頃です。

機械設計の仕事は「感覚」ではなく「論理」の世界

機械設計を行う上で最も大切なことは何でしょうか?私は、それは数字と真摯に向き合い、ごまかすことなく、白黒をはっきりさせることだと考えています。

機械設計者が活躍する舞台は、物理現象が存在する現実世界です。物理現象に感情は介在しません。数字が気分やその場の雰囲気で変わることもありません。何らかの因果関係に基づいて発生する物理現象をいかに正確に捉え、数字という客観的な指標で課題を乗り越えていくか。これが機械設計の核心です。

この「感情を読む必要がない」「白黒をはっきりさせなければいけない」「曖昧さがない」という環境は、凹凸さん(特にASD系の特性を持つ方)にとっては、非常に心地よく、能力を発揮しやすい状況と言えるのではないでしょうか。

「機械設計者」という仕事のリアル:設計だけでは終わらない現実

機械設計の作業そのものだけを切り取れば、凹凸さんにとってはまるで楽園のように思えるかもしれません。しかし、実際に「機械設計者」として働くとなると、少し異なる現実が見えてきます。

なぜなら、機械設計者の仕事は、純粋な設計作業だけではないからです。

  • 設計の上流工程である「仕様決め」:顧客や関連部署の要求を正確に把握し、設計の方向性を定める必要があります。
  • チームでの協業:複数のメンバーでプロジェクトを進める場合、密なコミュニケーションとすり合わせが不可欠です。
  • 試作品の手配や関連部署との折衝:製造部門や購買部門など、多くの人と関わりながら仕事を進める必要があります。
  • その他、下流工程の部署との折衝:品質保証部門や生産技術部門など、設計後の工程も考慮した連携が求められます。

このように、設計業務以外にも多くのコミュニケーションや調整業務が発生するのが実情です。

チーム構成が鍵?凹凸さんにとっての理想的な環境とは

もし、設計チームのメンバー全員が凹凸さんであれば、仕事は驚くほどうまく進むことがあります(これは私の経験則です)。お互いの特性を理解しやすいため、仕事の進め方やスピード感のズレが生じにくいのです。

しかし、凹凸さんではない方がチームに加わると、途端にギクシャクしてしまうことがあります。感覚の違いから、仕事の進め方や求めるクオリティに大きな差異が生まれやすいからです。

特に、リーダーが凹凸傾向の強い方で、部下にそうでない方が多い場合、コミュニケーションの難しさから、チーム運営が非常に困難になるケースも見受けられます。凹凸さん側が自身の特性を隠す「カモフラージュ」をすることで、なんとか仕事が回ることもありますが、その際の精神的な労力は計り知れません。

大企業という選択肢:仕事の細分化がもたらす働きやすさ

凹凸さんと機械設計の相性は非常に良いと思いますが、設計以外の業務が増えると、途端に苦痛を感じやすくなるのも事実です。しかし、一般的に、機械設計の仕事だけを完全に切り離して担当することは難しいのが現実です。

ですが、希望がないわけではありません。機械設計業務に集中できる環境も存在します。その一つが、大企業メーカーにおける機械設計の専門職(プレイヤー)としての働き方です。

大企業では、業務が細分化されていることが多く、特定の専門分野に特化して働くことが比較的許容されやすい傾向にあります。これにより、凹凸さんが得意とする機械設計の業務に集中しやすい環境が見つかるかもしれません。

ただし、注意点もあります。プレイヤーとして有能であると評価されると、本人の意向とは別に、マネージャーとしてのキャリアアップを期待されることが少なくありません。「良いプレイヤーが良いマネージャーであるとは限らない」という言葉は、特に凹凸さんにとっては顕著に当てはまる可能性があります。自分が何を得意とし、どのような仕事であれば最大限のパフォーマンスを発揮できるのかを深く自己分析し、それを上司に明確に伝えるコミュニケーション能力が、望まないキャリアパスに進まないためには不可欠です。

まとめ:自己理解を深め、自分に合った働き方を見つけよう

この記事では、凹凸さんにとって機械設計の仕事がいかに適しているか、そして、特に大手メーカーのような環境であれば、より理想的な働き方が実現できる可能性があることについて、私自身の経験を交えながらお伝えしてきました。

しかし、最も重要なのは、自分自身の特性を深く理解し、それを周囲に伝え、自分に合った環境を選択していく努力を怠らないことです。これを怠ると、せっかくの適性も活かせず、辛い思いをすることになるかもしれません。

これらは、あくまで私個人の経験に基づく見解です。

もし、私と同じような凹凸の特性を持ち、日々の仕事や生き方に悩んでいる方がいらっしゃれば、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

ABOUT ME
一松
一松
ASD手帳2級。 四十代サラリーマン設計者。 過適応から休職、復帰。
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