【実録】なぜ僕は残業せずに帰るのか?ASD当事者が語る「人生最優先」の仕事術

「最近、部署内がやけに慌ただしい…」

「4月の人事異動でベテランが抜けて、残ったメンバーで穴埋めしてるけど、正直キツイ…」

あなたの職場でも、似たような状況はありませんか?

私の部署もまさに今、そんな感じです。多くの同僚が連日遅くまで残業し、心身ともに疲弊している様子がうかがえます。

しかし、そんな状況下で大変申し訳ないのですが…私は、やるべきことを終えたら定時でサッと帰っています。

「周りが大変なのに、自分だけ帰るなんて…」

「あいつは仕事ができない、やる気がないダメ社員だ」

そう思われるかもしれません。実際、私のやり方は、短期的な「頑張り」を評価する従来の価値観とは異なるでしょう。

でも、断言します。私にとって、この働き方こそが、長期的に見て最大のアウトプットを出すための最善策なのです。

今回は、特にASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ私が、なぜこの働き方に至ったのか、その根底にある「優先順位付け」についてお話しします。

「優先順位」の付け方

なぜ同僚が残業に追われる中で、私は比較的早く帰れるのか。その違いは、仕事への向き合い方、もっと言えば「人生における優先順位」の付け方にあると考えています。

レイヤー1:人生における最優先事項

まず、私には人生における明確な優先順位があります。これは、あらゆる行動の基盤となる最も重要なレイヤーです。

  1. 自分の健康
  2. 妻の健康
  3. 子供の養育(経済的・精神的な安定を大学卒業まで提供すること)
  4. 親や兄弟との良好な関係

驚かれるかもしれませんが、ここには「仕事」「お金」「社会的地位」といった項目は入っていません。

私にとって、これらは『目的ではなく、あくまで上記の優先順位1〜4位までを守り、達成するための「手段」』でしかない、と明確に定義しています。

極端な話、「妻との信頼関係や愛情」でさえ、私や妻自身の健康、子供の養育という目的を達成するための重要な「手段」と捉えています。

ASDの特性として、曖昧な状況や定義が苦手です。だからこそ、「人生で何を最も大切にするか」を明確に定め、それ以外は「手段」と割り切ることで、迷いが減り、行動に一貫性が生まれます。逆説的ですが、この割り切りが、結果的に(少なくとも表面上は)社会性を保つ助けになっていると感じています。

レイヤー2:仕事における優先順位(行動指針)

人生の優先順位を定めた上で、次に「手段」である仕事への取り組み方にも優先順位(行動指針)を設けています。

これは、「タスクAよりタスクBを先にやる」といった日々の業務レベルの優先順位とは少し異なります。どのように仕事と向き合い、行動するか、という方針です。

私の仕事における唯一かつ最大の優先順位(行動指針)は、

「常に70〜80%の力で、持続的にアウトプットを出し続けること」

です。

言い換えれば、**「ここ一番で120%の力を出さない」**ことを自分に課しています。

なぜなら、特に疲れやすさを感じやすいASDの私にとって、短期的に120%の力を出すことは、その後のガス欠と回復の遅れを招き、結果的に1ヶ月、1年といったトータルでのアウトプット量を下げてしまうからです。

毎日70〜80%の力でコンスタントに成果を出し続ける方が、トータルでの貢献度は高くなると確信しています。

だから、無理はしません。疲弊する前に、エネルギーを残して帰る。これが冒頭でお話しした「早く帰る」という行動に繋がります。

「70〜80%のアウトプット」がもたらす効果

この「70〜80%のアウトプットを持続する」という唯一の指針を持つことで、日々の行動がシンプルになります。

  • やるべきことの取捨選択: この指針に照らし合わせ、「持続的なアウトプットに本当に必要か?」を自問します。不要な会議、過剰な資料作成、目的の曖昧な作業などは、自然と優先度が下がります。
  • 合理的な手段の選択: 70〜80%のアウトプットを出すために、必ずしも自分で全てをやる必要はありません。「自分でやるより、人に頼んだ方が効率的で、持続可能性も高い」と判断すれば、迷わず依頼します。
    • ASDの特性上、コミュニケーションは得意ではありません。「人に頼むのは苦手だな…」と感じることもあります。しかし、「持続的なアウトプットを出すための合理的な判断だ」と自分の中で正当化することで、苦手意識よりも目的達成を優先し、行動に移しやすくなります。

ASDだからこそ「ルール化」が生きる

曖昧さが苦手な私にとって、このように「人生の優先順位」と「仕事の行動指針」を明確にルール化することは、自分自身に分かりやすく命令を与え、行動するための「正当性」を作る作業です。

このルールがあるからこそ、周りが残業している状況でも、「自分のルール(=持続的なアウトプットを最大化するための戦略)に従って帰る」という行動に自信が持てます。

この考え方は、他の人にも有効かもしれない

この「優先順位の明確化」と「持続可能なアウトプットへの集中」という考え方は、

  • ASD(自閉スペクトラム症)の方:曖昧さを排除し、行動基準を明確にする助けに
  • ADHD(注意欠如・多動症)の方:やるべきことが発散しがちな思考を、重要な指針に集中させる助けに
  • 定型発達の方でも、内気・HSPなどで、周りに気を遣いすぎて疲弊しやすい方:自分軸を持ち、断る・早く帰るための「正当な理由」を作る助けに

なるかもしれません。

もしあなたが、日々の業務に追われ、疲弊感を感じているなら、一度立ち止まって「自分にとって本当に大切なものは何か?」「仕事で目指すべきは瞬間的な120点か、持続的な75点か?」と考えてみるのはいかがでしょうか。

もしこの考え方を試してみて、何か変化があれば、ぜひコメントなどで教えていただけると嬉しいです。

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