「休職を経てやっと復帰できたのに、自分の仕事がない…」
この記事を読んでいるあなたは、もしかしたらそんな状況に置かれているのかもしれません。
私は今大手企業で設計者として働いていますが、実は数年前ASD(自閉スペクトラム症)由来の疲れとパワハラが原因でメンタル不調に陥り休職した経験があります。
幸い、休職期間は半年ほどで済みリワークプログラム(私の場合は2ヶ月間)を経て元の職場への復職を果たしました。
しかし、復職後に待っていたのは『仕事がない』という想像以上に厳しい現実でした。
今回は、復職後の『職場とのギクシャク」特に「仕事がない」状況をどう乗り越え、むしろそれをバネにして以前よりも自分らしく働けるようになったのか』を私の実体験を具体的にお話しします。
(パワハラとの向き合い方や乗り越え方については、また別の機会に詳しくお話しできればと思います。)
この記事が、
- 休職・復職を経験し、今後のキャリアに不安を感じている方
- 復職後に「仕事がない」「窓際族」状態になってしまい、悩んでいる方
- ASDや発達障害を抱えながら、会社で働くことに難しさを感じている方
- 今の働き方に疑問を感じ、新しい選択肢を探している方
にとって、少しでも前向きな気持ちになるきっかけとなれば幸いです。
休職から復職へ:ASDと向き合った日々
私が休職に至った直接的な原因は、ASDの特性からくる疲れやすさと、職場でのパワハラでした。設計者という仕事は好きでしたが、マルチタスクやハードワーク。何より、カモフラージュ(過剰適応)で知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでいました。
休職期間とその後のリワーク期間は、自分自身のASDという特性と深く向き合う時間となりました。「どうすれば、この特性を持つ自分が、会社という組織で無理なく、かつ貢献しながら働けるだろうか?」その一点を必死に考え抜きました。
環境を大きく変えることへの不安もあり、私は元の部署への復帰を選択。復職にあたり、一つ大きな決断をしました。それは、自身のメンタル不調での休職とASDであることを、職場のメンバーにオープンにすることでした。
これは「障害者だから配慮してほしい」という一方的な要求ではありません。「こういう特性があって、苦手なことや困ることがあります。その時は、どうか力を貸してください」という、協力のお願いでした。
幸い、この作戦はうまくいきました。私自身がオープンにしたことで、周りの人も腫れ物扱いすることなく、自然に接してくれました。復職はスムーズにいったかに見えました。
復職後の現実:「仕事がない」窓際族の日々
しかし、職場に私の居場所はあっても、「仕事」はありませんでした。休職中に私が担当していた業務は、当然ながら他のメンバーが引き継いでいます。部署に戻った私に、割り当てられるタスクはほとんどありませんでした。
上司からも具体的な指示はなく、ただ席に座ってパソコンの電源を入れるだけの日々。いわゆる『窓際族』です。「もしかして、これが追い出し部屋ってやつなのかな…」本気でそう思うほど、やるべきことがありませんでした。
最初は、この状況が精神的に非常につらかったです。
「自分はもうこの会社に必要とされていないんだ」
「辞めさせようとしているんだ」
そんな被害者妄想にとらわれ、メンタルが再び悪化しそうになることもありました。
逆境をチャンスに変えた、2つのターニングポイント
この苦しい状況から抜け出し、精神的に楽になれたきっかけは、大きく2つあります。
1.妻の言葉と「社内求職活動」
どん底の気分で家に帰り、「今日も何もやることがなかった…」と妻に愚痴をこぼした日のこと。彼女から返ってきたのは、予想外の言葉でした。
「え、仕事ないってラッキーじゃん!会社にクビにされる心配もなく、公認でダラダラできるってことでしょ?」
目から鱗でした。確かに、メンタルヘルス不調で休職した社員を会社はそう簡単には解雇できません。むしろ、仕事を意図的に与えないことはパワハラの一種とみなされる可能性すらあります。
「そうか、今の僕は会社に対してある意味『有利な立場』にいるんだ。そして、『何もしない』ことが、今の僕に与えられた『仕事』なのかもしれない」
そう考え方を変えた瞬間、心がスーッと軽くなるのを感じました。
そして、ただ待つのではなく、自ら動くことにしました。部署内の仕事に固執せず、他部署も含めて「社内で自分のスキルや経験を活かせる場所はないか」を探し始めたのです。いわば「社内求職活動」です。
「ここに居場所がないなら、自分で作ればいいじゃないか」
そう前向きに考え、色々な部署の人と積極的にコミュニケーションを取るようにしました。不思議なもので、ポジティブなエネルギーは人を引き寄せます。少しずつ「手伝ってほしい」「このプロジェクトに興味ない?」といった声がかかるようになり、徐々に仕事が増え再び充実感を得られるようになっていきました。
2.「副業」という新しい世界
もう一つの大きな転機は、「副業」を始めたことです。
ある時、「40代からは稼ぎ口を2つにしなさい」という本を読み、強く感化されました。
もちろん、すぐに大きな収入を得ようとは考えていません。「まずはスモールステップで。10年後に月に5〜10万円稼げるようになること」を目標に設定し、ブログやその他、自分の興味関心のある分野での活動を始めました。
副業に注力する時間が増えるにつれて、『自分は、この会社だけに縛られなくても生きていけるんだ』というマインドが芽生えてきました。これは、精神的な安定に非常に大きな影響を与えました。
会社への依存度が下がったことで、本業である会社員の仕事に対しても、より客観的に、そして自由な気持ちで向き合えるようになったのです。プレッシャーが減り、むしろ本業でのパフォーマンスやアウトプットの質も向上するという、嬉しい相乗効果もありました。
休職後に仕事がなくても、道は拓ける
「休職から復帰したら、仕事がなくなっていた」
これは残念ながら決して珍しい話ではないようです。そして、その状況に耐えきれずに会社を去ってしまう人も少なくないと聞きます。
もしあなたが今まさにその状況にいるのなら、伝えたいことがあります。
「仕事がない」ことを、ネガティブな側面だけで捉えないでください。
見方を変えれば、それは「会社に籍を置きながら、自分の時間とエネルギーを、別のこと(自己分析、スキルアップ、社内での新たな役割探し、副業の準備など)に使えるチャンス」と捉えることもできます。(もちろん、これは比較的安定した大企業だからこそ許される側面もあるかもしれませんが。)
そして、会社だけに自分の価値や人生を委ねる必要はない、ということを知ってください。副業でも、学び直しでも、地域活動でも何でも構いません。会社以外の世界に目を向けることで、精神的な安定と新たな可能性が見えてくるはずです。
私自身、結果的に会社に残る選択をしましたが、休職前よりもずっと主体的に、そしてイキイキと仕事に取り組めている実感があります。それは、「仕事がない」という逆境をバネに、自分で考えて行動し、会社に依存しないマインドを手に入れたからだと思っています。
まとめ
今回は、ASD当事者である私が、休職・復職を経て「仕事がない」状況に陥り、そこからどのようにして立ち直り、むしろ以前よりも充実した働き方を手に入れたのか、その体験談をお話ししました。
もしあなたが今、同じような困難に直面しているなら
- 「仕事がない」状況を、別の角度からポジティブに捉え直してみる。
- 社内で受け身にならず、自ら仕事や役割を探しに動いてみる。
- 会社以外の世界(副業など)に目を向け、精神的な支柱を作る。
といったことを、試してみてはいかがでしょうか。
あなたの状況が少しでも好転し、あなたらしい働き方を見つけられることを、心から応援しています。